大きく揺れ始めた製薬業界
- 桐田
- 10 分前
- 読了時間: 4分

ロイター通信が「AZとBMSとの統合に向けた予備会談」を報じてからはや5日ですが、このニュースを震源として製薬業界内でさまざまな情報が飛び交い始めました。中には何の裏付けのない憶測レベルのものもあるので冷静さを保つ必要がありますが、これを機に、製薬業界が今後どのように動いていく可能性があるのかということを考える必要はありそうです。その理由は、「業界の動きは皆さん一人ひとりのキャリアに決して小さくない影響を与える」ためです。
■ この記事の見方
今回の記事を読み解くポイントは、
・AZとBMSが経営統合に向けた事前協議を始めた(現時点で協議の継続は不明)
・AZはアメリカ市場での直接上場を発表済みで、さらなる経営基盤の強化をめざしている
・両社が統合すれば時価総額約4000億ドル(60兆円)の世界4位のメーカーが誕生する
・ただ、統合実現に向けたハードルはかなり多い
- 両社の主要事業領域がかなり重なっていて統合効果が見えにくい
- 反トラスト法(独占禁止法) に触れるリスクが大きい
- 政治的な横やりが入る可能性が高い
といったことですが、これらの情報に業界の状況を掛け合わせて考えると、「統合実現の難易度はかなり高が高いが、もし実現すれば業界全体に大きな影響を与える」ことが分かります。
■ 統合が実現した場合に他社に与える影響
両社が統合した場合、BMSの免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボ等)と、AZの抗体薬物複合体(ADC) や分子標的薬(タグリッソ等)、免疫チェックポイント阻害薬(イミフィンジ等) などが一社に集約されることになります。その結果、自社のポートフォリオ内だけで強力な併用療法の自社完結型治験を高速展開できるようになり、がん治療の標準治療(SOC: Standard of Care) を押さえる力が飛躍的に強まります。そうなると、医師の処方行動にも大きな変化がでてくることが容易に想像され、競合他社はオンコロジー事業の戦略を描き直す必要に迫られる可能性が出てきます。
そうなった場合、自社単体で対抗できない企業は、
① 自社のアセットと他社のアセットを組む「企業間クロス・アライアンス」の加速
② 超特定領域(ニッチ・先進モダリティ) への集中投資による差別化戦略への移行
③ 初期バイオテックの早期M&A
といった方法で対応することが不可欠になります。
いずれの方法も従来の事業戦略の延長線上にはないため、その実現に向けては社内組織構造の見直しやそれに伴う人員獲得や配置転換など、人事・人材戦略面への影響も不可欠となりそうです。
■ 他にも業界を揺るがすニュースはある
今回の話は2社の統合に伴う業界の地殻変動ですが、実はサイエンスの側面からの地殻変動もあり得ます。その一つは、8/5にモデルナ社が発表した「インフルエンザに対するmRNAワクチンの承認取得」です。これは、ワクチン事業のパラダイムを根本から変えるエポックメイクな出来事で、
・開発や製造リードタイムの劇的な短縮
・流行株ミスマッチ(予測外れ)リスクの低減
・パンデミック対応能力の向上
などの観点から、ワクチン業界を根本から変えていく可能性があると見られています。
■ まとめ
製薬業界はサイエンス革命の繰り返しを経て発展してきた歴史があります。最近でも、肥満症治療薬が新たなマーケットを創造し業界の戦力図を一変させ始めるなど、インパクトの大きい出来事が進行していますが、このmRNAワクチンも同様の影響を持つことになるかもしれません。そして、このような革命・進化のタイミングでは、そこで働く社員のキャリアもその影響を受けることになります。
未来を予測することは誰にもできませんが、「時代の変化に素早く順応していく」ことは自身の人生設計においてとても大きな意味を持ちます。これからそれぞれの夏季休暇の時期になりますが、これを機にご自身のスキルセットを棚卸したり、内なる想いに耳を傾ける時間を取ってみてはいかがでしょうか。
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<ご参考:自分自身の想いや時代の進化に向き合った人たちの事例>
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