❝副業❞からでも未来は拓ける

製薬メーカーやCRO、薬局で働く20代、30代前半の方にとって、「副業」はまだ少しハードルが高いものかもしれません。「本業が忙しい」「会社に知られたらどうしよう」「副業をする時間があるなら、本業の勉強をしたい」――そう考えるのも自然なことです。
しかし、キャリアの選択肢を広げるという意味では、若手のうちから副業を経験しておくことには大きなメリットがあります。
ちなみに、今回のコラムで取り上げる❝副業❞とは、単に「収入を増やすための仕事」ではありません。本業を続けながら、社外で新しい経験やスキルを身につけ、自分自身の市場価値を高めるための活動という定義です。この定義のもとに副業について具体的に説明していきたいと思います。
【副業のメリット】
まずは副業を持つことで得られるメリットからです。
メリット①「社外で通用する力」が分かる
長年 同じ業界・同じ会社の中で仕事をしていると、自分の経験やスキルがどの程度社外で通用するのかを実感しにくいものです。
例えばMRであれば、医療関係者とのコミュニケーション力や提案力。CRAや臨床開発職であれば、プロジェクトマネジメント、資料作成、関係者との調整力。工場勤務であれば、品質管理、生産管理、改善活動などを日々培っておられると思いますが、それらのスキルは果たして今いる会社でなくても通用するかを考えてみたことはありますか?
副業では自身のスキルや能力を「会社の看板なし」で提供することになります。そのため、自分のスキルに汎用性があるのかということや、自身の市場価値をリスクを負わずに客観的な視点から理解する良い機会になります。「自分では当たり前だと思っていた経験が、実は社外では大きな価値になる」という発見もあるでしょう。
メリット② 新しいスキル・経験が、将来のキャリアの幅を大きく広げる
副業の大きな魅力は、本業とは異なるスキルを意識的に身につけられることです。
例えば、MRとして経験を積んでいる人が副業でマーケティングやWebライティング、採用支援などを経験する。CRAや臨床開発職の人がデータ分析やプロジェクトマネジメント、ビジネス企画などに挑戦する。工場勤務の人が業務改善の経験を活かしながらITツールやデータ活用を学ぶ――といった具合です。
実はこうした経験は、一つひとつは小さなものであったとしても数年後には大きな差になる可能性があります。
例えば「MR+マーケティング」「CRA+データ分析」「工場+DX」「臨床開発+プロジェクトマネジメント」のように、本業で培った専門性に別のスキルが掛け合わされることで、次のステップに進むのに必要な強みが生まれるからです。
これは転職時にも大きな意味を持ちます。例えば、「MRとして5年間働きました」だけではなく、「MR経験に加えて、マーケティング業務にも携わり実際に施策を企画・実行した」という経験があれば、応募できる求人の幅は変わってきます。つまり副業は、今の仕事のためだけではなく、3年後、5年後の自分が選べる仕事を増やすための投資と考えることができます。
メリット③ 「会社に依存しない」という感覚を持てる
副業の収入そのものよりも重要なのが、「自分自身の力で会社以外から報酬を得た」という実感です。
たとえ最初は月1万円、2万円でも、自分の知識や経験が市場で評価されたという事実は、大きな自信になります。もちろん、すぐに独立したり、本業を辞めたりする必要はありません。むしろ「今の会社で働きながら、社外にも自分の価値の源泉を持っておく」という状態が、これからのキャリア形成では強い武器になってきます。
【副業を行ううえで注意が必要なこと】
ここまで副業を持つことのメリットを説明してきましたが、副業には注意すべき点もあります。
注意点①「規則・規約を理解すること」
当然のことではありますが、まずは勤務先の副業規定をよく確認することが必要です。たとえ副業を認めている会社でも、業務内容の制限が厳しく定められていたり、事前に申請を人事部門へ提出して許可を得なければならない場合があります。
また、ヘルスケア業界で働く人は特に「情報管理」に注意が必要です。本業で知り得た未公開情報、顧客情報、研究開発情報、営業上の機密情報などを副業で利用することは絶対に避けなければならないので、問題が起こらない体制を自分の中で構築しておくことが大切です。
注意点②「本業とのバランス」
どの業務においても、繁忙期になると業務量が一気に増えることがあります。
例えばMRなら、新薬のローンチ直後の垂直立ち上げ期には面談・講演会・説明会・社内会議などが重なります。CRAや臨床開発職では、試験の重要な局面や施設対応、データレビュー、各種資料作成などが集中することもあります。工場勤務でも、製造計画やトラブル対応、監査・査察、急な需要の発生などによって負荷が大きくなることがあります。
こうした状況で、平日の夜や休日をすべて副業に充ててしまうと、最初は頑張れても、徐々に疲労が蓄積していきます。
例えば、
平日の帰宅後に毎日2~3時間副業をする
土日をほぼ丸一日、副業に使う
納期に追われて睡眠時間を削る
本業のメールや資料作成をしながら副業のことも考えてしまう
といった状態になると、本業の集中力や判断力が低下する可能性があります。
さらに怖いのは、本人が「副業が原因」と気づかないまま、本業でミスが増えたり、疲れが取れなくなったりするケースです。したがって、副業は「無理なく継続できるか」を重視することをおすすめします。
具体的には、
最初は月5~10時間程度から始める
求められる成果物の納期の融通が利く仕事を選ぶ
本業が忙しくなったときに一時的に仕事量を減らせるようにする
といった工夫が重要になってきます。
では、どんな副業から始めるのがよいのか?
最初から大きな仕事をする必要はありません。むしろ、「トライアルOKの仕事」から試してみるのがおすすめです。
例えば、記事のライティング、資料作成、オンラインでの業務サポート、営業支援、採用支援、研修・講師、データ入力・分析などは、比較的スモールスタートしやすい仕事です。また、少し専門的なの知識がある人であれば、医療・薬学分野の記事作成やリサーチ、教育コンテンツの作成など、自分の専門性を活かせる仕事から始めるのもよいでしょう。
また、副業先としては、大手企業だけに目を向ける必要はありません。むしろ最初の一歩としては、スタートアップ企業や小規模企業など、フレキシビリティの高い組織のほうが取り組みやすい傾向があります。実際、「まずは週数時間」「このプロジェクトだけ」といった関わり方ができる企業もあります。そうした企業では、実際にやってみて「思ったより本業との両立が難しい」「自分には合わない」と感じた場合に比較的スムーズに終了できます。
さてここまで副業のメリットや注意すべきことを書いてきましたが、少しイメージがわきましたでしょうか。
20代、30代前半は、まだキャリアの方向性や可能性を大きく変えられる時期です。「今の会社で経験を積む」ことと「社外で新しい経験を積む」ことは決して相反するものではありませんので、自分のキャリアの幅を広げることに寄与しそうで、且つ 自分自身の負担が大きくならなければチャレンジを一考する価値はあるのではないかと思います。良い副業は、将来のキャリア開発のための投資になってくれるはずです。
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